地域環境学の部屋総合地球環境学研究所
コロンビア川の環境アイコン




  環境アイコンとは,生態系サービスを象徴する生物種・生態系で,その保全ないし再生に多様なステークホルダーが強い関心を示し,環境アイコンを中心として自然環境に関する多様な活動が起こる可能性をもつものをいいます。

環境アイコンには、次のような性質があります。

 ● 地域住民、利害関係者の強い思い入れ・・・多様な伝統文化、伝統的資源利用とリンク
 ● 「国際」レベルでの差異化が可能な特異性とその科学的基盤
  ・・・世界で唯一、生きた化石、絶滅危惧種、などのラベル
 ● 産業振興へのポテンシャル ・・・観光、特産品などを通じた地域振興の潜在性
 ● 環境保全へのインパクト ・・・「○○を守れ!」が強力なメッセージとなる

 環境アイコンは,特定の自然環境や生態系とかかわる科学的な根拠に基づいて人々の関心を引きよせ,多様な活動の中核となる存在であり,科学性と社会性を併せ持つことで自然環境に対する人々の多様なかかわりを強化する役割を担っています。
 環境アイコン(Environmental Icon)という言葉は,英語圏では環境問題に顕著な影響力を示してきた人物(「沈黙の春」の著者レイチェル・カーソンなど),絶滅種(オオウミガラスなど),人々に親しまれている動物(英国のハリネズミなど)に使われることが多いようです。絶滅危惧種であり、生きた化石として知られるシーラカンスを意識的にアイコンとして活用し,生態系の保全に向けた多国間の共同研究の活性化を目指す「アフリカ産シーラカンス生態系プログラム(African Coelacanth Ecosystem Program)」のような例もあります。また、地域文化の中で中心的な役割を果たしている生物種を、「文化的キーストーン種(Cultural Keystone Species)」と呼ぶこともあります。文化的キーストーン種も、自然再生や生態系管理の活動の中で、有効に活用できるものと考えられています。

環境アイコンは,以下の3種類に分類することができます。もちろん、ひとつのアイコンに複数の性質が共存することもあります。

「生物種アイコン」


 絶滅危惧種など生物種としての特徴
コウノトリ(兵庫県豊岡市)・トキ(佐渡)・アフリカゾウ(東アフリカ)

兵庫県豊岡市の空を舞うコウノトリ:池田啓撮影
(兵庫県豊岡市の空を舞うコウノトリ:池田啓撮影)

「生態系アイコン」


 サンゴ礁など自然環境や生態系の特徴
白保のサンゴ礁(石垣島)・有明海の干潟・白神山地・知床

石垣島白保のアオサンゴ群落
(石垣島白保のアオサンゴ群落)

「社会的アイコン」


 野生生物や生態系にかかわる地域社会の伝統文化や資源利用
佐久鯉(長野県佐久市)・片野鴨池のガン・カモ類(石川県加賀市)

伝統的な佐久鯉料理
(伝統的な佐久鯉料理)

 これらのアイコンは,環境保全,自然再生,持続的資源利用,自然環境に関わる地域文化の保全,環境調和型の地域振興など、さまざまな場面で、多様なステークホルダーによって活用されています。また、環境アイコンの生成プロセスと活用の場面では,地域住民だけでなく、国際機関,国や自治体,科学者,環境保護団体など、さまざまな外部者もかかわっていることが多いようです。また、環境アイコンは,単に自然環境や地域文化を象徴するだけでなく,多様な「生態系サービス」と深く関連しています。したがって、環境アイコンを通じて,地域社会にとって有益な生態系サービスを保全ないし再生することが可能です。

参考:

佐藤哲.2008.環境アイコンとしての野生生物と地域社会-アイコン化のプロセスと生態系サービスに関する科学の役割.環境社会学研究 14:70-85
Garibaldi A. and Turner N. 2004. Cultural Keystone Species: Implications for Ecological Conservation and Restoration. Ecology and Society 9(3): 1. http://www.ecologyandsociety.org/vol9/iss3/art1




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